世の中を混沌と
させる恐怖の
カレーの噂
混沌とした世の中を秩序ある世界に変えるためのカレーの食し方とは…
第九夜
K・KとOが若干不明な御呪いの儀式をしている最中、K・K宅から30メートル離れた民家では、男が白い粉を練っていた。
なんどもなんども男は粉を練り上げている。
どうやら男はうどんを作っているらしい。
うどんの起源は中国にあると言われている。
シルクロードを渡って西へ伝わりイタリアのパスタになり、日本では、うどん、そばとして広がっていったと言われている。香川県には、弘法大師空海が唐の国からうどん作りに適した小麦と製麺技術を伝えたという伝説もある。
うどんは、奈良時代に遣唐使によって中国から渡来した小麦粉の餡入りの団子菓子「混飩(こんとん)」に起源とする説がある。青木正児の「饂飩の歴史」によれば、ワンタンに相当する中国語は「餛飩」(コントン)と書き、またこれを「餫飩」(ウントン、コントン)とも書き、これが同じ読み方の「温飩」(ウントン)という表記になり、これが「饂飩」(ウドン)となったとする説だ。
男には野望があった。
秩序が乱れた世の中を変えてしまうことだ。
世の中を変えるためには、一度世の中を破壊してしまわないといけない。そのためには、世の中を混沌とさせなければならない。
そう、うどんが「こんとん」に戻るほどに。
男は何やら呪文を唱えながら、うどんを練っている。
「私の呪いを込めたうどんを食べることで、世の中は混沌とする。そして、その後に秩序ある世の中に生まれ変わるのだ。」
しかし、男のうどんは完成しなかった。その理由は、呪いを込めたうどんが黒くなってしまうことだった。
男が呪いを込めると、白いはずのうどんが黒くなる。これでは露骨に怪しすぎて食べる人がいないだろう。
男は気分転換に外に出た。
すると、どこからかカレーの匂いが漂ってくる。
匂いのする方へ歩いていくと、そこはK・Kの邸宅だった。
「ごめんください。」
腹が減っていた男は、K・K宅のドアを開いた。ドアに鍵はかかっていない。
再び、「ごめんください。」と言った男の前にK・Kが表れた。
「もしや、カレーの匂いに引き寄せられたのでは?」
「その通りです。」
「見よ!恐怖のカレーが広がったではないか!」
男が唖然としていると、Oが表れた。
「夜中に男二人でカレーですか?」
男は、不思議に思ったが、夜中にカレーの匂いにつられて、他人の家を訪ねている自分については不思議に思わない。
部屋に招き入れられた男が目にしたものは、美味しそうに煮込まれたカレーだった。そのカレーは真っ黒だった。
その瞬間、男の脳裏に閃きが走った。
「この黒いカレーをかければ、私の黒いうどんは違和感なく、食べてもらえるのではないか!」
男は、自分が作っているうどんについて二人に話し、ここに恐怖のカレーと世の中を混沌とさせるうどんがであったのだった。
(という噂)
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