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恐怖のカレー

カレーにかけた

おまじないの噂

カレーの注文が殺到するようにとK・Kのかけたおまじない。

そのおまじないとは…

第八夜

 

K・K邸で御呪い(おまじない)が行われた。
K・Kはコンロにかけた鍋にカレーを入れ、火をつけた。


「コツは弱火だ。」


案外とK・Kは細かいとOは思ったが、何も言わなかった。
しばらくすると、部屋の中には、カレーの匂いが満ちた。


「食べたら絶対うまい」


Oはこだわりのカレーの出来栄えに満足していた。
カレーの匂いが漂う部屋で、K・Kは大きく息を吸い込んだ。そして、気合を入れて、「イオナズン!」と叫んだ。


「・・・・・・。」


Oは黙ったまま、K・Kの様子を見ている。
つかの間、二人の間には、気まずい空気が流れた。


ドヤ顔のK・Kに向かって、Oは口を開いた。


「それって、ドラクエの呪文だよね?」


「そうだ。爆発呪文だ。イオナズンのパワーで、恐怖のカレーは強大な力を得た。」


心なしか部屋の中では、カレーに香りが強くなっているような気がする。きっとじっくりと煮込んでいるせいだろうとOは考えている。


「今や、家の外にもカレーの匂いが漂っているぞ。」


K・Kは得意満面に言う。


「普通、カレーを煮込んだら、外にも匂いが広がるよね。」とOは思ったが黙っていた。


Oの不安をよそに、K・Kは名刺大の真っ白なカードを取り出した。


そして、今度は「アパレシウム(Aparecium)(現れよ)」と叫んだ。


「・・・・。それってハリーポッターの呪文だよね?」


雑学に詳しいOはとうとう口を挟まずにはいらなくなった。


「アパレシウム(Aparecium)」とい呪文は、透明インクで書かれた文字を強制的に出現させるもので、ハリーポッターシリーズの第2巻でハーマイオニーが使用している。

しばらくすると、真っ白な紙に絵柄が現れた。


そこには、おどろおどろしい絵が浮き上がり、「大吉」「中吉」「小吉」「吉」「末吉」「凶」「大凶」・・・と書かれている。おみくじだった。


「御呪いって言ったのだけど・・・」


Oは頼んだ内容と違うことを繰り返すK・Kに困惑しながらも、黙っていた。
何か言いたそうなOにK・Kが言った。


「大丈夫だ。現代人は御呪い(おまじない)と呪い(のろい)の区別がついていない。御呪いといえば、おみくじだろう。おみくじ欲しさにカレーの注文が殺到する。」


「いや、少々違う気がするが・・・。ところで、俺が命がけで作ったカレーは?」


「上手いだけではカレーは広がらない。知らないのか?今の時代は付録欲しさに雑誌を買う時代なのだ。大事なのはカレーではない!」


もはやその場はK・Kの独壇場となっていた。


「仕上げはこれからだ。」


今度、K・Kは、小さな手毬を取り出した。


「手毬??」


「そうだ。悪魔の手毬唄を知らないのか?大ヒット映画だぞ!」


「いや、知っているけど。恐怖のカレーは悪魔とは関係がないのだけど・・・」


「つべこべ言うな!この手毬は食べることができるのだ。室町時代初期に明から伝わったと言われるあるもので作られているのだ。タンパク質が不足しがちな当時の精進料理を豆腐と共に蛋白源の一翼を担う食材なのだ。炭水化物ばかり食べている現代人には必要な栄養素なのだ!」


もう、Oは何かを話す気力もなくなってきた。


「これで完璧だ。」


K・Kは、おみくじと手毬が入ったカレーを見ながら、ひとりで頷いている。


こうして、恐怖のカレーは完成した。


(という噂←おみくじと手毬は本当です)

 

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